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まず初めに、今回の調査から公開に至る経緯を述べておきたい。
夜×島の調査は、実は既に半年近く前の事であり、
それは雑誌「週刊粕取」への取材協力も兼ねたものであった。
この取材協力以前にも、私は一度だけ夜×島への上陸を果たしていたのだが、
天候悪化により数時間のみの滞在に終わっていた。
その為、リベンジも兼ねた二度目の上陸だったわけである。
二度目の夜×島調査は、
私にとっても「週刊粕取」側にとっても満足いく結果をもたらした。
それは「週刊粕取」139号の夜×島特集を見て頂ければ一目瞭然だろう。
雑誌発売後直ぐに、
私も調査内容をまとめ「都市伝説調査隊」を更新する予定であった。
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<週刊粕取 「呪われた島、夜×島」 特集より>
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それを踏みとどまらせたのは、「週刊粕取」編集者からの一通のメールだった。
そのメールには以下のような内容が記されていた。
「ライターの××さんが行方不明です。SHIBITO(筆者)さんとの取材で夜×島にはまってしまった××さんは、
雑誌発売直後に再び夜×島に行くと言い残し姿を消しました。
三×港で××さんらしき人を見たという証言もあるのですが、
その後の足取りは掴めていません。実は、ここだけの話なのですが、
同時期に某有名作家も三×港付近で消息を絶ったという噂もあります。」
その後、地元警察が捜査に乗り出したが、
結果的に××さんが見つかる事は無かった。
今までも数々の因縁めいた場所を訪れて来たが、
このような事件に発展したのは初めての事であり、
私が××さんを夜×島に連れて行かなければこのような事にならなかったのではという
自責の念、を感じずにはいられなかった。
その思いから、なかなかこの調査内容公開に踏み切れずにいたのだ。
夜×島の調査内容を公開する事により、更に××さんのような人を増やしたくない…今回の調査結果は封印すべきなのでは…と。
しかし、最近になって再び自分の中に生まれたある考えから、この件を公開する事を決心するに至った。
この島に隠された闇の存在を白日の下に晒し、警告を発する事が私の使命なのではないかと。
まず、決して安易な気持ちで「夜×島」には近づかないで欲しい。
仮にこの調査内容を読み、興味本位で夜×島に近づき何が起きようとも、当方は一切の責任を負えない事を理解して欲しい。
それに同意して貰える方のみが、今回の「真説夜×島事件」調査結果を読む資格を有すると思って欲しい。
以下、本題の「真説夜×島事件」記述である。
四開地方に存在する孤島・夜×島。
前代未聞のミステリーとも呼ばれた怪事件を境に、無人と化した廃墟の島。
この島に纏わる三大怪事件を挙げるとすれば、以下のようになるだろう。
夜×島に纏わる怪事件1・一夜にして全島民が姿を消した「夜×島島民消失事件」
夜×島に纏わる怪事件2・島民消失事件と同時に発生した「海底ケーブル切断事件」
夜×島に纏わる怪事件3・夜×島沖にて忽然と姿を消した「ブライトウィン号消失事件」
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<当時の新聞より>
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1960年代、夜×島金鉱資本の金発掘事業により「日本の黄金郷」とまで呼ばれた夜×島だが、
上記の怪事件の数々から「日本のバミューダ」という呼び名のほうがふさわしいと思えてくる。
夜×島に興味を持ち、頻繁に発生している「消失」事件を調査していくうちに、私は驚くべき事実を発見した。
まず、金発掘が盛んになる以前の島で、一番の有力者であった家の屋号は「羽生」。
ブライトウィン号を所有していた船舶会社は、輝勝フェリー。
英訳すると「輝く」は「Bright」であり「勝つ」は「Win」である。
そこからBright Win号と名付けられたのは容易に想像出来るとして、全てのアルファベットをばらし再構成してみる。
「Bright Win」→「Wing Birth」→「羽が生まれる」→「羽生」。
この偶然の一致は一体何なのだろうか?
この事実に気がついた私はあまりの事に恐怖を覚えた。
ただの偶然と笑えればいいが、実は調べていくと、数年前にやはり夜×島近海で「羽生丸」という釣り船が行方不明になっているのだ!
この奇妙な一致に対して恐怖心を抱くなというほうが無理なのではないだろうか?
勿論、夜×島へ向かう際の手段として船は使わざるを得ない。
しかし決して「羽生」に縁のある船にだけは私は近寄らなかった。
島への上陸は、多少の危険と手間を伴うものの不可能な事ではない。
(この件に関しては私の基本姿勢はノーコメントであり、
決して問い合わせに答えるつもりは無いのであしからず)
初上陸の際にまず圧倒されるのは、島の中心から天を貫くように伸びる鉄塔と、島の周囲を取り囲むコンクリートの防波堤であろう。
金の発掘が盛んになる以前の夜×島は、近隣との接触を極力避ける閉鎖的な島だったと記録に残っている。
その為、開発側である夜×島金鉱と島民達との軋轢は日に日に高まり、小競り合いも頻発していたらしい。
しかし、高度成長期に後押しされた開発の手は、島を鉄とコンクリートの要塞に仕立て上げたのだ。
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海に浮かぶコンクリートの奇妙な要塞。当時はどんな栄華を誇ったのだろうか。
しかしそれが今となっては巨大な廃墟として朽ち果てている姿はどこか物悲しくもある。
島には夜×島金鉱が建設した港以外に、それ以前からあった小さな漁港が存在し、
そちらには閉鎖的だった昔の島の風景がわずかに残されている。
家屋は朽ち果てているものの、ついさっきまで誰かが住んでいたかのように日用品がそのまま存在している。
まるで人々だけが一瞬のうちに消えてしまったかのように…。
いや、事実、人々は一瞬のうちに消えたのだろう…。
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古い島の風景を浸食するように鉄とコンクリートが覆い尽くし、しかし今となってはそれらは同一に廃墟と化している。
私は、都市伝説調査を忘れ、その風景に魅了され、ただただシャッターを押し続けた。
その結果、撮影写真は膨大な数になっていた。
今回、調査内容をまとめるべく、やっとその写真整理に手を付けたのだが…。
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私はこの写真を見て、夜×島に伝わるある古い言い伝えを思い出した。
夜×島には「屍霊」と呼ばれる穢れが存在すると。
それ故に近隣からも「忌み島」「黄泉島」と呼ばれ恐れられていたと…。
もしや、数々の怪事件とその存在に何らかの因果関係が存在しているとすれば…。
正直、これ以上の深入りをする気は無い。
私はまだ「消失」する気は無いのだから…。
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