××県、××郡の山中に存在する「羽×蛇村」。
今回、この羽×蛇村に纏わる数々の奇妙な噂を検証してみようと思う。

まず、「××村三十三人殺し」。
「××村三十三人殺し」とは、ある小さな集落が舞台となった事件である。
時代は戦時中まで遡る。
一人の青年がおかしくなり、日本刀と銃で、村人三十三人を次々と惨殺した。
たった一晩でその村は全滅した。
その後、村は無人のまま廃れ、1976年の土砂災害により村跡も消えた。
地図からも地名は消え、隣村であった羽×蛇村に吸収されることで、その存在は闇に葬り去られた…はずであ った。

しかし、人々の記憶からこの陰惨な事件が消えることは無かった。
そして、ここ数年になって××村の存在を示す噂が急浮上しはじめたのだ。

「三十三人殺し」の呪いだとされ、流通している噂の幾つかを紹介しよう。

証言1・今もその廃村跡が××郡の山中に存在し、血に塗れた衣服が廃屋内に散乱している。
証言2・四つん這いの老婆が現れ何かを貪る姿を見た。
証言3・その廃村跡には村人の怨念が渦巻き、訪れたものは正気を失ってしまう。
証言4・何人かの若者がその廃村跡を捜し求め行方不明になっている。
etc…

この噂は、主にインターネットによって広げられ、多くの人々の興味をひいた。

<週刊粕取 「××村三十三人殺し」 特集より>

実際に「三十三人殺し」の村跡は存在しているのだろうか?
私はその謎を確かめる為に、羽×蛇村役場に詳細を確認する電話を入れてみたのだが…その返答は以下のものであった。

「公式の記録にそのような記録は存在しない」

…では、全ては噂に過ぎないのか?

そう決め付けてしまう前に、羽×蛇村自体の検証に戻りたいと思う。
もともと、羽×蛇村のある一帯は迫害された異端の信仰を持った人々の隠れ里だったと言われている。
「三十三人殺し」の集落も、実際は元々羽×蛇村の一部の集落であったという説もある。

ここで、羽×蛇村に纏わる噂をまとめ直してみたい。

・迫害された異端の信仰の歴史
・歴史の闇に隠れた謎の事件との関連
・他の地方では見られない謎の風習、伝承
・「神隠し村」と近隣の村から言われるほど、行方不明者が絶えない場所
・この村を度々襲う自然災害の異常さ

その噂の背後に、土地に纏わる何かが見え隠れするように思えてならない私は、羽×蛇村に潜む闇を求め、
実際に訪れることを決意した。

訪れるのは初めてだったが、××郡の山中といっても地図に地名があるならば辿りつく事は容易であろうと予測していた。
最寄の鉄道駅から車で行く事一時間三十分。
案の定、羽×蛇村には辿り着く事ができた。

しかし、村は、数ヶ月前の地震による土砂流災害の傷跡を残しており、人々は村の復旧に追われていた。
村人の表情は暗く、生気が無い。

ここに、以前あるインターネット掲示板に残された地図がある、これは実は××村跡を示す道順だと言われている。
私はこの拙い地図を元に××村跡を捜すことにした。

<とあるオカルト掲示板に残された××村の地図>

県道沿いにしばらく車で山道を上る。
草木が生い茂り道が狭まったところで車を降り、徒歩に切り替えた。

地図にあった木組看板の残骸のようなものを見つけた。

私は、目的の集落を目の前にして一種の興奮状態に陥った。
しかし、その興奮はすぐに冷まされてしまうことになった。
なぜなら…その先の道は崩れ去り、先に進む事が不可能になっていたからである。
これも、土砂流被害の傷跡であろうか…。
諦め戻ろうとした時、私の視界の端に崩れかけた廃屋の屋根が映った。
慌てて草木を掻き分け近づくと、目前にこの廃屋が現れたのだ。

荒れ果てた廃屋。これは××村と関係があるのだろうか?

この廃屋を探索したあと、私は村に戻る事にしたが、今回の目的のひとつであった、
羽×蛇村教会もやはり土砂流災害で失われており、ここでも無駄足を踏む事になった。

しかし、入手した一つの噂がある。

地元の中学生らしき少女が語ったものである。
今回の土砂流災害後から語られている噂で、朝方、霧の向こうに少年の亡霊が現れるというものである。
何故かその少年は、日本刀と銃らしきものを持っているという。
それは…三十三人殺しを彷彿させないだろうか?
新たな噂は何を意味しているのだろうか?

結局、村で手に入れる事ができた情報はそれだけであった。目的であった、幾つかを今回は確認できなかったわけだが…。
しかし、それでも「羽×蛇村」に纏わる噂の数々の原点になったと思われる「何か」を体験する事ができたと感じている。